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〜COLUMN〜
「神の手」は素晴らしいです。でも・・・
「脳腫瘍治療」をめぐる誤解

福島先生「グリオーマ手術」に挑む (YouTube)

 

 

天才脳外科医といわれる福島先生は、テレビ番組で何度もその天才的な手術の模様が伝えられています。

その影響力は絶大で、「脳腫瘍」といえば、福島先生に連絡してみればと、周囲から言われた経験のある患者のご家族は数知れずです。

この動画の回では、「グリオーマ」の手術に挑む模様が伝えられています。見事な技術ですし、助かった患者とそのご家族は本当に良かったと思います。

しかし、この場合の疾患は動画中のMRI画像にあるように、脳幹内部ではなく外部におできのように、かたまりとなって発生している比較的良性腫瘍であり、このサイトのテーマである脳幹の橋といわれる部分の「内部」に発生しているものではないのです。よって摘出手術が可能なのです。

「小児脳幹部グリオーマ」は、「びまん性」といって、脳幹内部の神経にべったりとはりつき、浸潤している悪性腫瘍であり、摘出は不可能であり、よって脳外科医の出番はほとんどありません。外科的な処置は、脳の周囲を流れる脳脊髄液の流れが腫瘍によって悪くなり脳を圧迫する「水頭症」の手術ぐらいでしょうか。

この病気に限らず、「がん」とくに脳腫瘍は「チーム医療」が重要になってきます。天才外科医が手術をすればそれですべて解決するケースは限られています。脳外科医のほかに内科医、看護師、放射線技師、心理カウンセラー、緩和ケアチーム、薬剤師、栄養士、理学療法士、作業療法士、医療ソーシャルワーカー等々が患者の状態に応じてチームを組み一人の患者の治療を行っていくのです。

がんの中でも脳腫瘍は、脳外科医の権限が強く、手術のみならず、化学療法を行う場合にも脳外科医の医療的指示によって進められて来た歴史があります。化学療法は、高い知識と専門性を要求される医療行為であり、訓練を積んだ内科医が行うべきなのですが、脳外科医が手を出し、知識不足から医療事故が起こっているケースもあります。これは、職分の棲み分けが出来ている他の先進国ではあり得ません。

 

福島先生は偉大な脳外科医だとは思いますが、あの手術が終わったあとにも多くの患者には、リハビリ、そして疾患によっては再発、後遺症など、まだまだ長い闘いが待っているということをテレビ番組は正確に伝えているとは思えません。

 

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